情報公開請求のオンライン化

はじめに

アイキャッチ:情報公開請求のオンライン化

住民票の写しや各種証明書など、行政手続のオンライン化は年々進んでいます。一方で、情報公開請求は今も窓口持参・郵送・FAXが中心という自治体が少なくありません。

情報公開請求は、平日の開庁時間に来庁しにくい住民にとってハードルが高い手続です。オンラインで受け付けられるようにすれば、住民の負担を減らせるだけでなく、受付や転記といった職員の事務も効率化できます。

この記事では、情報公開請求をオンライン化する方法と、導入にあたって自治体が整備すべきことをまとめました。

1. オンライン化の背景と法律上の位置づけ

自治体の手続のオンライン化は、法律で「努力義務」と位置づけられています。情報公開請求も、その対象になる手続のひとつです。

法律

自治体に関係する内容

情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(デジタル手続法)第13条

条例・規則に基づく手続を、オンラインなどで行えるようにする施策を講ずるよう努める(努力義務)

同法 第5条第4項

オンライン手続のための情報システムの整備などに努める(努力義務)

官民データ活用推進基本法 第10条

行政手続はオンラインでの利用を原則とする方向性を示す

情報公開請求は、多くの場合、各自治体の情報公開条例に基づく手続です。そのため、オンライン化の根拠になるのはデジタル手続法第13条で、具体的な方法は自治体が自ら決めることになります。

つまり、オンライン化は法律上の義務ではありません。それでも、国の方針として行政手続のオンライン化が進むなか、住民からは「なぜ情報公開請求だけ紙なのか」と見られやすい手続になりつつあります。

参考:総務省資料(自治体の行政手続のオンライン化について)

2. オンライン化のメリット

情報公開請求のオンライン化は、住民の請求のしやすさと、職員の受付事務の効率化の両方につながります。

情報公開請求をオンライン化するメリット:住民と職員それぞれのメリット

住民にとってのメリット

  • 24時間いつでも請求できる:開庁時間に来庁したり、郵送の準備をしたりする必要がなくなります
  • 入力フォームで記入漏れが減る:必須項目や入力例があるため、書き方に迷わず請求できます
  • 受付を確認しやすい:送信後の自動返信メールで、請求が届いたことをすぐに確認できます

職員にとってのメリット

  • 受付と転記の手間が減る:請求内容がデータで届くため、手書きの請求書を読み取って入力する作業がなくなります
  • 担当課への振り分けが早くなる:請求内容を所管課へメールなどですぐに共有できます
  • 補正のやり取りが早くなる:対象文書の特定などで確認が必要な場合も、メールで連絡しやすくなります
  • 受付状況を管理しやすい:件数や処理状況をデータで把握できるため、期限管理や統計の作成も楽になります

3. オンライン化の3つの方法

情報公開請求をオンラインで受け付ける方法は、大きく分けて3つあります。既に庁内にある仕組みを使えるかと、住民が請求する文書を探しやすいかの2点で比べると選びやすくなります。

情報公開請求をオンライン化する3つの方法:電子申請サービス・メール受付・文書目録と連携

方法

概要

向いているケース

注意点

① 電子申請サービスを使う

自治体が導入済みの電子申請システムや、汎用の申請フォームに請求書の様式を作る

すぐに始めたい、追加費用をかけたくない

住民は請求する文書を自分で特定する必要がある

② メールで受け付ける

専用アドレスに請求書(PDFなど)を添付して送ってもらう

件数が少なく、まず試したい

様式の不備が出やすく、受付管理が手作業になる

③ 文書目録と連携した請求フォーム

Web公開した文書目録の検索結果から、そのまま請求できるようにする

住民サービスを大きく改善したい

目録の公開とあわせた準備が必要

①と②は、受付の窓口をオンラインに移す方法です。ただし、住民が「どんな文書があるのか」を知る手段は変わりません。

③は、文書を「探す」ところから「請求する」までをつなげる方法です。請求する文書を特定しやすくなるため、曖昧な請求や補正のやり取りも減らせます。

4. 導入の手順

オンライン化は、システムを選ぶ前に、例規と業務フローを確認するのが近道です。大まかな流れは次の5ステップです。

  1. 例規を確認する
    • 情報公開条例・施行規則で、請求方法が「書面の提出」に限られていないかを確認する
    • 書面と定めた手続をオンラインで行えるようにする条例(「情報通信技術の利用に関する条例」など、名称は自治体による)があれば、その対象になるかを確認する
  2. 受付から開示までの業務フローを決める
    • オンラインで届いた請求を、誰が受け付け、どの課へどう回すかを決める
    • 開示決定の通知や、写しの交付方法(郵送・窓口・電子データ)も整理する
  3. 受付の方法を選んで準備する
    • 第3章の3つの方法から選び、入力項目と自動返信メールの文面を作る
    • 入力項目は、紙の請求書の記載事項にそろえる
  4. 庁内で試験運用する
    • 職員がテスト請求を行い、受付・振り分け・通知までの流れを確認する
  5. 住民に周知して運用を開始する
    • 情報公開のページや広報で、オンライン請求の方法を案内する
    • 窓口・郵送での請求も引き続き受け付けることを明記する

5. 導入時の注意点

オンライン化でつまずきやすいのは、受付そのものよりも受付の前後にある手続です。導入前に次の点を整理しておきましょう。

注意点

確認すること

例規との整合

条例・規則で請求方法が書面に限られている場合は、改正やオンライン化の条例の適用が必要か

写しの交付と費用

写しの作成・送付にかかる費用を、どう支払ってもらうか(窓口・振込・電子データでの交付など)

本人確認

情報公開請求は、自分の個人情報の開示を求める請求とは別の手続。本人確認の要否は自治体の条例・運用に合わせる

個人情報開示請求との区別

自分の情報の開示を求める請求は本人確認が必要なため、フォームを分けるか、案内で区別する

請求者情報の管理

届いた氏名・住所・連絡先の保存場所と、閲覧できる職員の範囲を決める

デジタルに不慣れな人への配慮

窓口・郵送・FAXでの請求も残し、オンラインは選択肢の一つとして案内する

特に写しの交付と費用の支払いは、オンライン化しても窓口や郵送が残りやすい部分です。電子データでの交付ができるかどうかも、あわせて検討するとよいでしょう。

まとめ

情報公開請求のオンライン化で押さえておきたいのは、次の3点です。

  1. 自治体の手続のオンライン化は、デジタル手続法で努力義務とされている
  2. システムを選ぶ前に、例規と受付から開示までの業務フローを確認する
  3. 受付だけでなく、写しの交付・費用・請求者情報の管理まで含めて設計する

さらに一歩進めるなら、受付をオンラインにするだけでなく、住民が請求する文書を探せる仕組みとあわせて整えると、請求のしやすさが大きく変わります。


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