郷土資料・古文書のデジタルアーカイブを低コストで始める方法

はじめに

アイキャッチ:郷土資料・古文書のデジタルアーカイブを低コストで始める方法

郷土資料、古文書、過去の広報誌や市史。自治体には、地域の歴史を伝える貴重な資料が数多く保管されています。しかしその多くは、書庫や資料室にあり、来館しなければ見ることができません。

「デジタルアーカイブにしたいが、予算がない」「何千万円もかかるのでは」という声もよく聞きます。たしかに、大規模なシステムを構築して全件を一度に公開しようとすると、費用は大きくなります。

この記事では、すでにあるデータを生かし、小さく始めて広げていくための方法と、公開前に確認しておきたいことをまとめました。

1. デジタルアーカイブが求められる背景

デジタルアーカイブは、資料を残す「保存」と、誰でも使えるようにする「活用」を同時に実現できる取り組みです。

観点

内容

資料の保存

紙の劣化や災害による消失に備え、画像として記録を残せる

住民サービス

来館しなくても、自宅から地域の歴史資料を閲覧できる

学校教育・地域学習

郷土学習の教材として、授業で使いやすくなる

職員の業務

問い合わせへの対応や、周年事業・市史編さんでの資料探しが楽になる

国もデジタルアーカイブの構築と活用を推進しています。その中心にあるのが、文化財や美術、学術資料などの情報をまとめて検索できる分野横断型のポータルサイト「ジャパンサーチ」で、2020年8月から正式版が公開されています。

自治体のアーカイブも、資料の情報(メタデータ)を整えておけば、将来こうした全国規模の仕組みと連携しやすくなります。

2. コストが膨らむ理由と3つの抑えどころ

デジタルアーカイブの費用は、大きく「資料のデジタル化」「システムの構築」「登録・運用の手間」の3つです。それぞれで工夫すれば、初期費用を大きく抑えられます。

デジタルアーカイブのコストを抑える3つのポイント:既存データの活用・クラウド型の利用・最低限の項目で公開

抑えどころ① すでにあるデータから使う

すべての資料を新しく撮影・スキャンする必要はありません。庁内には、意外とデジタルデータが残っています。

  • 広報誌の入稿データや、ホームページに掲載した過去のPDF
  • 市史・町史を制作したときの写真や原稿データ
  • 展示や周年事業のために、以前スキャンした資料

抑えどころ② 「作る」より「使う」システムを選ぶ

独自にシステムを構築すると、初期費用だけでなく、数年ごとの更新費用もかかります。クラウド型(SaaS)のサービスを使えば、構築費を抑え、サーバーの管理も不要になります。

抑えどころ③ 登録作業を軽くする

意外と手間がかかるのが、資料ごとの説明文やキーワードの入力です。最初から完璧を目指さず、タイトル・年代・分類など最低限の項目で公開し、中身は文字起こしで検索できるようにすると、登録の手間を大きく減らせます。

3. 小さく始めるための5つのステップ

デジタルアーカイブは、「全件をそろえてから公開」ではなく「公開しながら増やす」と考えると、始めやすくなります。

公開しながら増やす:初年度は広報誌・市史、2年目に古写真・地図、3年目以降に古文書・郷土資料

  1. 最初に公開する資料を絞る
    • 問い合わせが多い資料、周年事業などで注目が集まる資料から選ぶ
    • 例:過去の広報誌、市史・町史、古写真など
  2. すでにあるデータを集める
    • 各課や図書館・博物館にデジタルデータがないか確認する
    • 足りない資料だけ、スキャンや撮影を外部に委託する
  3. 登録する項目を決める
    • タイトル・年代・分類・所蔵先など、最低限の項目にとどめる
    • 将来の他のアーカイブとの連携を考え、項目名をそろえておく
  4. 公開前に権利と内容を確認する
    • 著作権、個人情報、人権への配慮を確認する(第4章)
  5. 公開して、少しずつ増やす
    • 年度ごとに追加する資料を決め、継続して登録する
    • 閲覧数や問い合わせの変化を記録し、次年度の予算要求の根拠にする

4. 公開前に確認すること

歴史資料は、所蔵しているからといって自由に公開できるとは限りません。公開前に、次の3つの観点で確認しておきましょう。

観点

確認すること

対応の例

著作権

写真や文章の著作権が残っていないか。広報誌に掲載した外部の写真やイラストは特に注意

権利者に許諾を取る。権利者がわからない場合は公開を後回しにする、文化庁の裁定制度を検討する

個人情報

氏名・住所・顔写真など、現在も存命している可能性のある人の情報が含まれていないか

該当箇所を伏せる、公開対象から外す

人権への配慮

古文書や古い地図などに、差別につながるおそれのある記述がないか

人権担当部署と相談し、公開方法や公開範囲を判断する

特に古文書は、当時の価値観で書かれた記述を含むことがあります。公開の判断は担当者だけで行わず、庁内で基準を決めておくと安心です。

また、文字起こし(OCR)で中身を検索できるようにすると、これまで目につきにくかった記述も見つかりやすくなります。公開前の確認は、画像だけでなく文字起こしした内容でも行うと確実です。

5. 予算化のヒント

デジタルアーカイブは「あったらいいもの」と見られがちで、予算の優先度を上げにくい事業です。他の事業や計画と結びつけて説明すると、予算化しやすくなります。

  • 周年事業と結びつける:市制・町制施行の節目は、過去の資料を公開するよいタイミングです
  • 庁舎移転や書庫の整理と結びつける:紙資料を整理する機会に、あわせてデジタル化する
  • 計画に位置づける:総合計画やDX推進計画、文化財保存活用地域計画などに記載しておく
  • 国の交付金を確認する:内閣府の新しい地方経済・生活環境創生交付金には、デジタルを活用した地域の課題解決を支援する「デジタル実装型」があります。対象になるかは事業の内容や年度ごとの要件によるため、企画部門に確認しましょう

また、初年度は小さく始め、閲覧数や問い合わせの変化を実績として示しながら、次年度以降の予算を拡大するのも現実的な方法です。予算要求の書き方は、情報公開システムの予算要求の書き方も参考にしてください。

まとめ

郷土資料・古文書のデジタルアーカイブを低コストで始めるには、次の3点が大切です。

  1. すでにあるデータを生かし、クラウド型のサービスで構築費を抑える
  2. 公開する資料を絞って始め、年度ごとに少しずつ増やす
  3. 著作権・個人情報・人権への配慮を、庁内の基準で公開前に確認する

地域の歴史資料は、一度失われると取り戻せません。完璧な形を待つより、できるところから始めることが、資料を次の世代につなぐ近道です。


歴史資料の公開も、行政資料と同じ仕組みで

地方自治体向け情報公開プラットフォーム「JooHoo」では、行政資料や文書目録に加えて、過去の広報誌や郷土資料などの歴史資料も公開できます。

  • クラウド型で導入しやすい:サーバーの構築や管理は不要です
  • AIによる自動文字起こし:スキャンした資料も文字データにし、本文まで検索できます
  • 最低限の項目で登録できる:タイトルや分類を付けてアップロードすれば、中身は検索で探せるようになります
  • 公開前の個人情報チェック:文字起こしした内容から、個人情報の候補をAIがハイライトします

導入を検討中の方には、予算要求に使える資料一式を無料で配布しています。

予算要求キットをダウンロードする(無料)

最新の記事

記事一覧を見る