広報誌PDFの読み上げ順が崩れる原因と対策

はじめに

アイキャッチ:広報誌PDFの読み上げ順が崩れる原因と対策

広報誌をPDFでホームページに掲載している自治体は多いでしょう。しかし、そのPDFを画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)で読むと、文章の順番がバラバラになることがあります。

「記事の途中で別の記事に飛ぶ」「見出しが1文字ずつ読まれる」といった状態では、目の不自由な人には内容が伝わりません。公開していても、すべての住民に届いているとは言えない状態です。

この記事では、広報誌PDFの読み上げ順が崩れる原因と、担当者が自分でできる確認方法、現実的な対策をまとめました。

1. 自治体にアクセシビリティが求められる背景

自治体のホームページには、障害のある人や高齢者を含む誰もが利用できることが求められています。主な根拠は次の3つです。

根拠

自治体に関係する内容

障害者差別解消法

行政機関等は、障害のある人への「合理的配慮の提供」が以前から義務。2024年4月の改正法施行で、事業者も義務になった

JIS X 8341-3:2016

ウェブコンテンツのアクセシビリティに関する日本の規格。ホームページに掲載するPDFなども対象になりうる

みんなの公共サイト運用ガイドライン(2024年版)

総務省が公的機関向けに作成。JIS X 8341-3:2016の適合レベルAAへの準拠を求めている

広報誌は、行政のお知らせや制度の案内が詰まった、住民にとって最も身近な情報源のひとつです。そのPDFが読み上げられない状態は、優先して改善したいポイントといえます。

2. 読み上げ順が崩れる仕組みと3つの原因

スクリーンリーダーは、画面の見た目ではなく、PDFの中に記録された「文字の順番」や「構造の情報」をもとに読み上げます。人の目には自然に読める紙面でも、その情報がなければ、読み上げ順は崩れてしまいます。

読み上げ順が崩れるとは:本来の読み順と、タグのないPDFで記事をまたいで読まれる例

原因① 印刷用のデータをそのまま掲載している

広報誌のPDFは、印刷会社に入稿するためのデータ(PDF/Xなどの印刷用規格)をそのまま掲載していることが少なくありません。印刷用のデータは「きれいに印刷すること」が目的なので、「どこが見出しで、どの順に読むか」という情報(タグ)が入っていないことがほとんどです。

原因② 雑誌型の複雑なレイアウト

広報誌は、段組み、縦書きと横書きの混在、写真の回り込み、コラムの囲みなど、複雑なレイアウトが一般的です。タグがないと、読み上げソフトは文字の配置を推測して読むため、記事をまたいで横に読んでしまうことがあります。

原因③ 飾り文字が1文字ずつバラバラに配置されている

特集のタイトルなど、デザインした飾り文字は、1文字ずつ位置や大きさを調整して配置されていることがあります。この場合、PDFの中ではつながった言葉として扱われず、1文字ずつ別々に読まれたり、順番が入れ替わったりします。文字を画像や図形に変換している場合は、そもそも読み上げられません。

3. 自分でできる確認方法

専門のツールがなくても、次の3つでおおよその状態は把握できます。掲載前の広報誌PDFで試してみてください。

  1. テキストをコピーして順番を確かめる
    • ページ全体を選択してコピーし、メモ帳などに貼り付ける
    • 記事の文章が途中で切れていたり、見出しがバラバラになっていたりしたら、読み上げ順も崩れている可能性が高い
  2. タグの有無を確認する
    • Adobe Acrobat Readerの「文書のプロパティ」で、「タグ付きPDF」が「はい」か「いいえ」かを確認する
    • 「いいえ」の場合、読み上げ順の情報は入っていない
  3. 実際に読み上げてみる
    • Windowsの「ナレーター」や、Acrobat Readerの「読み上げ」機能で、数ページだけでも聴いてみる
    • 実際に耳で確かめると、どこでつまずくかがよくわかります

なお、文字をドラッグで選択できないPDFは、画像でできたPDFです。この場合は読み上げ自体ができません(詳しくはホームページのPDFが検索できない問題と、全文検索で解決する方法)。

4. 対策:3つの方法

対策は大きく3つあります。広報誌のように複雑なレイアウトの場合は、PDFの修正だけに頼らず、テキスト版を併せて提供するのが現実的です。

読み上げ対策の3つの方法:タグ付きPDF・テキスト版の提供・制作段階での配慮

方法

内容

メリット

注意点

① タグ付きPDFを作る

制作ソフトから書き出すときにタグを含め、読み上げ順を調整する

広報誌の見た目のまま読み上げられる

複雑なレイアウトほど調整に手間がかかる。毎号の作業が必要

② テキスト版を提供する

記事の本文を、読む順に並べたテキストやHTMLページとして公開する

読み上げ順が確実。スマートフォンでも読みやすい

写真や図の内容は文章で補う必要がある

③ 制作段階で配慮する

飾り文字をばらさない、画像には代替テキストを付けるなど、作る前から読み上げを前提にする

後からの修正が減る

印刷会社・制作会社との取り決めが必要

テキスト版を作るときのポイント

  • 記事ごとに見出しを付ける:読み上げソフトの利用者は、見出しで記事を飛ばしながら読むことが多いためです
  • 写真や図は文章で説明する:イベントの地図や日程表は、場所や日時を文章で書き出す
  • 電話番号や申込方法を省略しない:紙面ではアイコンや囲みで示している情報も、文字で載せる
  • PDF版と同じ場所に置く:「テキスト版はこちら」と、PDFのリンクのすぐ近くに案内する

制作会社が入稿前に作った原稿データ(Wordやテキスト)があれば、それをもとに作ると手間を大きく減らせます。

5. 制作を委託するときの仕様書の書き方

広報誌の制作を外部に委託している場合は、仕様書に「納品物」としてアクセシビリティに配慮したデータを書いておくのが最も確実です。契約後に追加で依頼すると、費用や納期の調整が必要になります。

次のような項目を、自治体の事情に合わせて仕様書に加えてください。

項目

記載例

納品データ

印刷用データとは別に、Web掲載用のPDFを納品すること

タグ付け

Web掲載用のPDFはタグ付きPDFとし、見出し・本文の読み上げ順が記事ごとに整っていること

テキストデータ

各記事の見出しと本文を、読む順に並べたテキストデータ(Wordまたはテキスト形式)を納品すること

画像の説明

写真・図・地図には、内容を説明する代替テキストを付けること

飾り文字

タイトル等の飾り文字は、読み上げで正しく読まれるように処理すること

確認

納品前に読み上げソフト等で読み上げ順を確認し、結果を報告すること

すべてを一度に求めると費用が膨らむこともあります。まずは「テキストデータの納品」から始めると、少ない負担でテキスト版を提供できるようになります。

まとめ

広報誌PDFの読み上げ対策で押さえておきたいのは、次の3点です。

  1. 読み上げ順が崩れる主な原因は、印刷用データのままの掲載・複雑なレイアウト・バラバラの飾り文字
  2. コピー&貼り付け、タグの有無、実際の読み上げで、担当者でも状態を確認できる
  3. 複雑な広報誌は、PDFの修正だけでなくテキスト版を併せて提供し、仕様書で納品物に含める

広報誌を「公開している」だけでなく、「誰もが読める」状態にすることが、すべての住民に情報を届ける第一歩です。


広報誌のアーカイブを、誰もが読めて探せる形に

地方自治体向け情報公開プラットフォーム「JooHoo」では、広報誌や行政資料のPDFをまとめて公開し、本文まで検索できる形で提供できます。

  • テキスト版の表示:資料ごとに、読み上げやすいテキスト版をHTMLページとして表示できます
  • AIによる自動文字起こし:過去の広報誌をスキャンしたPDFも、文字データにして検索できます
  • 本文までの全文検索:読み仮名検索で表記ゆれを吸収し、該当ページへ直接移動できます
  • 年度・カテゴリでの整理:過去の号も含めて、年度やカテゴリで探しやすく公開できます

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